田舎寺に残る「歌い猫」の話
そのむかし、月夜に猫おどりがあったという。
当山には夫婦猫とその間に生まれたばかりの仔猫一匹、それに留守番の
犬が飼われていた。
当山第四世・戒定院妙信日永上人が、ある夜、小豆曽根の草薙神社前
を通りかかると、多くの猫たちがガヤガヤと話していた。
驚いた妙信上人は足を止め、ものかげから見ていると、そこへなんと
自分の飼っていたオス猫「サン」が現われ、ある猫からどうして
こんなに遅くなったと、どなり声をあげられていた。
そこでサンのいうことには、今日は夕飯がおそくなったうえに、
小僧(澄月、妙月)どもが熱い小豆粥を作って食わせたという。
それを急いでフウフウと食べたら舌を焼いてしまい、今日は歌は
うたえないと集まった猫たちに頭をさげて謝っていた。
不思議な光景を目にした妙信上人は中曽根村の自坊へと急いで帰り、
小僧に今日は何を猫に食べさせたとたずねると、すべてサンの話
どおりであった。
嘘のような本当の、今もこの地に伝わる田舎の夜ばなし。
『大河津村文説集参』
今も草薙神社は猫の踊り場といわれており、霊験あらたかな小石が祀られ、この石を借りて持ち帰り身体の痛いところをさするとたちまち病が治るといいます。
そのお礼には新たに1つ別の小石を返すことになっています。
そのお礼には新たに1つ別の小石を返すことになっています。